最終更新日:1999年01月23日 Copyright (C) 1999, Hidetoshi WATANABE
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年末だというのに成田空港はガラガラだった。チェックインにも出国にもほとんど並ぶことなく乗り込んだユナイテッド航空UA853便。席についてほっとしていると、客室乗務員のお誘い。予想どおりビジネスクラスへのアップグレードだった。短い時間とはいえ、広い座席でくつろげるのはありがたい。しかし初めて中国を訪れたときも成田→北京のこの便でしかもアップグレードだった。あの時は中国がどういう国かも知らず、言葉も分からない状態での旅で、いろいろ嫌な目に遭ったり失敗が多かった。今回はそうならないように気をつけなければ....
3時間半ほどで夜の北京に着陸、本当にあっという間である。しかし北京の空港はやたら暗いぞ。空港ビルもほとんど明かりがない。飛行機から連絡バスに乗り換えるがバスの車内も当然真っ暗。ターミナルビルへの入口の通路も天井に照明設備があるのにもかかわらず、当然のように消えていた。
前回来たときは2年前、今回と同じ年末の休暇だった。あれから3回の中国旅行を経て、空港から市街までの安い行き方は心得ていた。民航班車(リムジンバス)を使うのである。市街までは16元。タクシーで行けば100元近くかかるので一人旅ではこの差は大きい。バスの車内では中国人が見知らぬ客同士で大声でおしゃべりをしている。北京独特の巻き舌音の多い発音は、夏に中国の南方を旅したときとは言葉の雰囲気がかなり違う。そう思うと少しワクワクした。車内では同じ便で北京に着いた日本人の旅行者と知り合いになる。しかし、彼は今日の宿をまだ決めていないという。こんな寒い夜の中、宿探しは大変そうだ。
バスを降りた後、やたらとのろのろ走る輪タクに揺られてやっとホテル(前門飯店)に到着。このホテルは日本から予約しておいたので、当然私の宿泊基準からするとかなり豪華である。何しろフロントで英語が通じるのだから(^_^;。バスの中で知り合った彼があまりにかわいそうだったので二人で部屋を共用することにする。思わぬところで宿代が半額になりちょっとラッキー。
今日やらなければならないことは2つだ。一つ目は泰安までの列車の切符を買うこと。ホテルを出て、適当にバスを拾って北京駅まで行く。とりあえずここで全国鉄路旅客列車時刻表(8元)を買い、朝食を食べながら列車を探す。朝食は駅前のファストフード店で肉のお粥と炒飯。お粥はうまいが炒飯はちょっと...体に悪そうな味がした。食後に向かった北京駅外国人用切符売場はガラガラ。希望の列車が一発で取れてしまった。北京から泰安まで軟臥2人で440元はかなり高いが、中国での最初の夜行列車なので奮発することにする。今日の相棒の方は長春まで行く硬臥を取ったらしい。良かったね。でもこれから先は切符買うの大変だよ、きっと。
午前中の仕事は終わったので、北海公園にでも行ってみることにする。公園に入ると、凍てついた池が出迎えてくれた。この瞬間に初めて、中国に来たんだということを実感した。公園の中にケンタッキーがあっても店頭で流れている音楽は中国語だ。そうだ、中国へ来たのだ。
公園内には永安寺がある。でもここにある二人組の仏像のポーズ、結構えっちなんだけど。北海公園はNHKの中国語会話のロケに何回か出てきた。「あ、そうそう、ここだここだ」と、テレビで見た場面を思い出して一人で悦に浸っていたのだった。結構楽しかった。
その後、北京飯店あたりへ行って昼食。なぜか昼間っからしゃぶしゃぶ(謎)。白菜とか肉とか魚とかいろいろ入れる。魚がうまかったな。ビールも飲んだけど、定番の薄味ビールであまり飲んだ気がしなかった。
食後は天安門へ行ってみる。荷物を預けなければいけないのだが、カメラまで預けてしまったのは敗因。夕日がとてもきれいだったのに撮影できなかった。15元+荷預け2元と高いけど充実した夕日だった。5時になると、広場前の国旗を降ろす儀式が始まる。兵隊が整然と執り行う儀式を、周りの人たちは黒山の人だかりを作って見ている。地元の人にもこれほど関心のある儀式を見れたのでちょっと嬉しかった。
ここで彼とはお別れ、私は適当に夕食を摂る。夕食に食べた茄子を炒めたもの、それにご飯に卵のスープ、うまかった。そして、今日やらなければならないもう一つのことをするために空港へ向かう。しかし、あまり深く考えることなく、空港では難なく妹と落ち合えた。とりあえず一安心。早速昨日と同じように民航バスで市街に向かう。これからが本当の旅の始まりである。
前日の夜は遅かったので8時起床。荷物をまとめてチェックアウト。まず今日の京劇の切符を買う。お菓子付きのちょっと高い席90元。その後西単まで行って朝食。チータン(タマゴ)麺を包子(パオズ)、何かのビーフン、二人で10元。包子がうまい。蒸篭に入って10個ぐらい出てくる。チータン麺の卵がうまい。ビーフンはいかにも辛そうなどぎつい色をしているけれどそれほど辛くはない、でも春雨みたいでちょっと物足りない。食事の後も西単を歩いていると羊焼とかメロンとかヨーグルトやみかんとかいろいろ売っているのでつい買い食いしてしまう。羊焼はちょっと辛いけど臭みがなくて素直な味だ。
妹は北京に留学していたこともあるので、北京の見所はほとんど行ってしまっているという。私は正直言って北京を楽しむのはまたいつか、北京だけを観光しに来たときにじっくり見ればいいと考えていた。そんなこともあって、最近新しくできたという北京西駅に行ってみる。地下鉄で軍事博物館駅まで行き、そこから南に歩いているとはるか彼方に霞の向こうに城のような建物が見えた。それが北京西駅だった。遠くからでもその大きさがよく分かる。しかし周囲には建設中のホテルがあるくらいで駅前の開発はまだこれからである。駅の中はきれいで近代的である。各ホームの上には巨大な待合室があって、待合室毎に売店やお手洗いもある。待合室の中は列車を待つ人でいっぱいで、寝てる人、カップラーメンを食べている人といろいろいるが、みんな禁煙を守っているので空気は良い。いいことだ。中国では公共の場所は禁煙なのだ。
今度はバスに乗って北京大学へ行くことにする。最初ガラガラだったバスは発車する頃には満員になった。やはり中国は人が多い。40分程うとうとしているとそろそろ北京大学の近くだ。しかし困ったことにどの停留所で降りればいいのか分からない。しかも車の左側に座ってしまったため、停留所が全然見えない。地図とにらめっこしていると、乗客の中に日本語が分かる人がいていろいろ教えてくれ、何とか北京大学の前で降りることができた。ありがとうございました。
大学の門の前には守衛がいたが、何気なく通ったら学内に入れた。早速学生寮を見つけて探検。学生寮は汚いものと相場が決まっているけれど、これはすごい。昼間なのに廊下は真っ暗で、廊下にはコンロやロッカーが乱雑に置いてある。さすがは北京大学と変に感心する。別の真新しい建物では日曜日だというのに講義の真っ最中。休みの日でも学内には学生があふれている。みんな学生寮に住んでいるのだろうか。
大学から市街までは小公共汽車を使ってみる。マイクロバスを使ったミニバスで必ず座れるのだが逆に満席になるまで客引きをするのでなかなか出発しない。前門まで5元。でも公共汽車の方が絶対速いと思うぞ。結局前門に着いたのは1時間後。もう夕闇が迫っていた。
前門近くのファストフード系の店で食事。最初北京ダックだと思って頼んだものは実は一字違いで鶏肉の定食だった。鶏肉とよく分からない野菜、豆味のパンのような饅頭で15元。肉も野菜も冷えているのが不満だが味はうまい。鶏肉なんかこれで暖かかったらどんなにかうまいだろうにと思うと非常に残念だ。
食後は腹ごなしにホテルまで歩いて帰る。前門から前門飯店まで行くんだからすぐ着くだろうと思ったら大違い。40分くらいは歩いた。さて、これからいよいよ京劇だ。
前門飯店には京劇の劇場があって毎晩上演している。観客はほとんどが外国人だ。劇は2部構成のようだ。最初のものは家の主人と刺客が夜の暗闇の中でチャンバラをする物。真っ暗なはずの場面の中であたかもお互いが見えないように振る舞っているのが面白かった。次の孫悟空はあまり面白くなかったが、戦闘シーンでは跳んだり回ったりアクションが激しく見ごたえがある。役者の台詞も息切れしている。なかなか活動的で楽しかった。
次は今日の最後の行事。北京駅へ行き、列車に乗る。中国の夜行列車に乗るのは初めてなので緊張する。発車の1時間ほど前に駅に着くと、待合室にはもう列車を待つ人が列車の案内板の前に長蛇の列を作っている。改札が始まるとその行列がゆっくりと動き出し、ホームへ向かう通路に吸い込まれていく。列車に乗り込むのはそれ自体がまるで儀式の一つのようである。期待と不安が入り交じりながら乗り込んだ軟臥の寝台は想像していた以上に清潔だ。4人個室で、同席した中国人2人組も愛想が良く安心。中国語と筆談を織り交ぜて話が弾む。明日の朝はいよいよ泰安だ。
昨日は結局寝ただけで1日終わってしまったので、洛陽の観光は今日からである。まず銀行へ行って両替。中州中路をずっと西の方に歩くと、ひときわ立派な高層ビル、それが中国銀行だった。なぜか銀行の中に列車の切符売場があったが、扱っているのは硬臥で軟臥は扱わないという。試しに聞いてみたら明日の上海行き硬臥はないとのことだった。軟臥の切符は駅で買えというのでタクシーで駅まで行ってみる。すると、昨日は気が付かなかったのだが切符売場の脇に団体専用軟臥窓口がある。明日の上海行き軟臥はあるというので早速購入。10元払って、出てきたのは2枚の整理券だった。これを切符の販売窓口に持っていくと初めて切符が買えるようだ。二人で749元。長距離だけあってさすがに高い。
一旦ホテルに戻って延泊の手続を取った後、やっと龍門石窟へ出発。延々とバスに揺られて降ろされたのは何もなさそうな川沿いの山地。一体どっちへ歩いたらいいのだ?うるさいタクシーの運転手に「タクシーに乗れ」と絡まれながらも無視して小さな本屋に入って道を聞いた。「龍門石窟はどっち?遠いの?」と聞くと、最初答えようとしていた本屋のおやじは、一緒に付いてきたタクシーの運転手が迷惑そうになんか言ったのを境に口を閉ざしてしまった。タクシーの運転手は、「俺がこの客を騙してタクシーに乗せようとしているのだから邪魔するな」とでも言ったようだった。通り掛かりに道を聞いた人も、結局は地元の人とグルになってしまう現実を目の前にして少し悲しくなった。
とにかく、龍門石窟までそう遠くないことは分かったのでさらに歩くと橋から入口が見えた。そこへ降りる階段の前で售票処があったので切符を買う(2元)。えっ?そんなに安いの?
入口へ行くとまた售票処がある、今度は30元だ。そこのおばちゃんは私の持っている2元のチケットを指差して「没有、没有」と言っている。要するに2元のこのチケットはインチキで、私たちはまんまと騙されたらしい。階段の上の售票処は誰かが勝手に看板を出して売っていただけだったのだ。さすが中国である。
いろいろあってやっとのことで入場。龍門石窟は川に沿って広がる岩の壁に延々と仏像が彫ってある遺跡だ。壁に穴を開けていくつもの祠があり。一つ一つに仏像が入っている。これも仏像を入れたのではなくて、岩を仏像の形に掘り残したのだろう。中には盗掘されたのか、仏像がないもの、首がない物もあった。
龍門石窟のハイライトはひときわ大きな奉先寺。巨大な仏像があるのはどこにでもありそうだけれど、それが岩に彫ってあるものなのだから驚きである。両側にはしっかり仁王像もいる。奉先寺の下には休憩所があって無料でお茶が飲める。要するに土産物屋なのだけれど、店主は日本語がうまい。日本人もよく来るようだが今年は不況で少ないらしい。こんな所にも不況の波が押し寄せていた。日本語の説明付きのかなり奇麗な龍門石窟写真集を買う。180元のところ100元にしてくれたけど、ほんとはもっと安そうだなあ。この土産物屋も結構いい商売しているかもしれない。
石窟の先には安っぽい龍のテーマパークがあった。そんなとこ行かないよ。でも石窟に入るときに入場券を買わされていた。ということは龍門石窟そのものの入場料は20元なのか。うーん、でもこれは知らないと分からないなあ。入場のときにボラれないようにするのが中国での旅行の課題だな。
橋を渡って対岸に渡るとそこが西山。ここからは石窟の全体が見渡せる。もやがかかってよく見えないけれどやっぱり偉大だなあ。そばをのどかに山羊の牽く馬車がが歩いていた。
途中適当なところで遅めの昼食を摂り、さらに街までバスで行く。明日は洛陽名物の水席料理を食べてみたいのでその下見。とりあえず店があることを確認して一安心。懲りずに近くの市場でいろいろ買い物をして結局ホテルに帰ったら8時近く。なんか今日も動きすぎだなあ。
朝になって目が覚めても、列車はひたすら走っていた。外は雪が積んでいて吹雪だった。しかし、列車の中は十分暖房しているので暖かい。軟臥の個室は空気も奇麗で体調の悪い私にとってはオアシスだった。隣の車両は食堂車だ。2人で食べに行きたかったが一応荷物が心配だったので、食事を部屋まで運んでもらった。麦のパンみたいなものに小豆のスープ、春雨や辛そうな野菜が盛られた朝定食10元。食堂車の食事は高くてまずいと聞かされていたが、これはなかなかいいぞ。
終点に近くなると、服務員が個室に入ってきて、私たちを通路に追い出し、何やら作業をはじめた。寝台の布団を畳み、シーツを代えていた。しかし、日本の寝台車でかつてやっていたようにてきぱきと職人技で作業するようなことはせず、ひたすらのんびりと作業しているのでなかなか終わらない。服務員が作業中にいなくなったので終わったのかと思っで個室に戻ると、服務員が戻ってきて結局また個室から追い出されたり。服務員の女性はみな結構奇麗なんだけどみな愛想はあまり良くない。
11時ごろ上海に着いた。昨夜から実に17時間。日本列島だったら半分走破してしまえる時間だ。ぐっすり眠れて疲れはしなかったけれど、中国の鉄道旅行はスケールが日本と違うなあ。ホームを出て改札へ向かう途中にホテルがカウンターを出していた。改札の中で客引きしていてある程度は安全そうだと思ったので、彼女についていって部屋を見せてもらうことにした。駅から5分ほど歩いた所にある上海站大酒店は、部屋が少し狭くて暗いが、安いしバスタブもあるのでここに決めた。
上海でやることは、買い物とで
まだ体調が悪く、喉が痛い。しかし頭痛はないし、食欲もまあまあある。変な風邪である。パンやトマトジュースで簡単に朝食を摂った後、荷物をまとめて8:30ごろチェックアウト。空港へ向かう。タクシーで民航バス乗り場まで行こうとするが、運転手はバス乗り場を知らないようだ。バス乗り場の近くにある上海展覧中心を紙に書いて示すとやっと分かってくれた。車は10分くらいでバス乗り場に着いた。上海駅からは南北に高架道路が通っていて高速に移動できる。渋滞の多い上海でこれは便利だ。
民航バス乗り場に着いたが、肝心のバスがまだ来ていないという。発車の予定は9:30。11時の飛行機に乗るのにちょっと危ないので結局そこからまたタクシーを拾って空港へ向かう。たまたまそこに居合わせた日本人旅行者と3人でタクシーを共用。運賃は32元で意外と安かった。これだったらホテルから空港まで直接タクシーで行ってもよかったかな。
結局9時過ぎには空港へ着いてしまった。ユナイテッド航空UA838便のチェックインカウンタはまだ人もまばらである。ザックがあまりに大きいため、機内持ち込みできないと言われて、慌てて荷造りし直す。そして出てきたのは再びビジネスクラスの搭乗券。しかしなんかこの旅行、運がいいぞ。
快適なビジネスクラスの旅のはずだが、風邪で体調を壊していたのと、朝食を食べたばかりなので、食事も半分ほどしか食べられずひたすら眠る。途中左手に富士山が奇麗に見えた。全く雲がない富士も非常に珍しい。こんなに空気が澄んだ空は久しぶりだ。
そうこうしているうちにもう成田に着いた。1999年になって初めて吸った日本の空気はやはり寒かったけれど、中国のような埃っぽさが全くなく、非常に快適だった。しかし、風邪は益々ひどくなるばかりで、日本での新年の最初の行事は、風邪を治すことになってしまった。
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渡辺英俊: hidetosi@nabe2000.com